オニノヤガラ(アオテンマとシロテンマ)

オニノヤガラはラン科の多年草で、光合成を行わず、ナラタケ属の菌に寄生して養分を得る(菌従属栄養性、mycoheterotrophs)という特殊な生活をしています。葉がなく花茎だけ真っ直ぐに付きだしている姿は一種異様です。オニノヤガラのような無葉緑植物(腐生ないし菌栄養植物)はランの仲間ではサカネランやツチアケビなどがありますが、ランの仲間は種子に胚乳を持たない無胚乳種子を作り、その発芽とある程度の大きさまでの成長のためにはラン菌と呼ばれる真菌(=カビ)によるエネルギーの供給が必要で、多かれ少なかれ菌の恩恵を受けていると言えます。園内のオニノヤガラは、7月初旬頃から開花しますが、花色などから分けると、品種のアオテンマ(青天麻、別名:アオオニノヤガラ、f. viridis )、シロテンマ(白天麻、f. pallens )に分かれるようです。

花期は少し過ぎているのですが(シロテンマはまだみられます)、調査に来られた方と一緒に塊茎を掘り起こしてみましたのでご紹介します。

photo
[石標61番付近 2009年07月10日 撮影]
アオテンマ(青天麻)
Gastrodia elata Blume f. viridis (Makino) Makino ex Tuyama

母種のオニノヤガラが茶褐色の花なのに対して、青みがかった緑色の花をつけます。花茎は高い場合には1mを超えます。天麻とはオニノヤガラの漢名、あるいは塊茎を干した物で漢方薬として用いるそうです。

photo
[石標61番付近 2009年07月03日 撮影]
photo
[石標61番付近 2009年07月13日 撮影]
photo
[石標61番付近 2009年07月03日 撮影]
シロテンマ(白天麻)
Gastrodia elata Blume f. pallens (Kitag.) Tuyama

こちらは白から黄色がかった花をつけます。花茎は30-50cm程で、アオテンマやオニノヤガラよりも小さく、1つの花茎に対する花の数も少ないようです。大きさだけではなく形態的な違いもあるそうで、品種ではなく変種あるいは別種との意見もあるようですが、まだ決着していないようです。

photo
[2010年07月21日 撮影]
掘り出したオニノヤガラの塊茎

茎から左上方向に塊茎が見える。

photo
[2010年07月21日 撮影]
オニノヤガラの塊茎

これは開花株ではなく、比較的新しい小芋。シロテンマの方はいっぱいできていました。根は全くなく、つるっとしています。地上部も含めた全体の外観はこちらをどうぞ。

photo
[2010年07月21日 撮影]
古い塊茎に絡みついた根状菌糸束

一年ごとに新しい小芋を作り、古い塊茎は役割を終えるそうです。昨年の塊茎にナラタケと思われる黒い根状菌糸束(菌糸が束状になった太い根状の構造物。矢印)が絡みついていました。オニノヤガラはこの菌糸を消化吸収していると言います。

map
シロテンマアオテンマ